MEMO

渋谷PARCO屋上から
7月ももう終わりですね……。

6月下旬~7月上旬は久しぶりのお出かけモードで、イベントに行ったりしていましたが、最近は再びおとなしくしています。

なんたって、新型コロナが収まらない!

収まらないどころか、すごい勢いになってるし。今年の7月は例年に比較して雨の日が異常に多かったと思うんだけど、湿度とか気候とか本当に関係ないんですね……。

引きこもりは僕の得意分野なので、家でじっとしていること自体にストレスは感じませんが、出口が見えなさすぎて不安です。

8月もいくつかイベントに行く予定だったけど、どうしようか迷い中です。9月のメディア芸術祭には必ず行きたいので、それまでにはある程度の収束を期待したいけど、無理かなぁ。

TOPICSGAME,漫画

ゲームソフト、『MOTHER』シリーズをテーマにしたトリビュートコミック作品が発売されました。


[本]Pollyanna(ポリアンナ)/ほぼ日Pollyanna編集部・編(amazon)
ほぼ日 2020.6.25発売 2400円+税
ISBN:978-4-86501-449-5

『MOTHER』は任天堂が発売したRPGシリーズで、コピーライターの糸井重里さんがゲームデザインを手掛けたことでも知られています。1989年に発売された第1作にはじまり、1994年発売の『MOTHER2 ギーグの逆襲』、最終作を謳った2006年発売の『MOTHER3』まで、計3本発売されています。

今回発売された書籍は、"公式トリビュートコミック"と銘打ち、糸井さんが主宰する「ほぼ日」が企画したものです。呼びかけに集まったMOTHERが好きな漫画家・作家さんたち35人による作品が収録されています。

ほぼ日では年末にMOTHER全3作に登場するすべてのことばを収録した書籍を発売する予定で、それに合わせて「HOBONICHI MOTHER PROJECT」というプロジェクトを発足させました。今回の書籍もその一環として発売されたものです。

僕にとって『MOTHER』シリーズは全作同じくらい大好きだし、思い入れも強い方だと思うのですが、このプロジェクトのことを知ったときには「今更MOTHERか……」と思ってしまったんですよね。だって、『3』が発売されて14年も経ってますし。ゲームのリリースに関するお知らせだったらテンションも高くなると思うんですが(例えばそれが僕には直接関係がない、海外版『3』の発売とかでも)、本かぁーっていう。

まあそうは言っても買うけどさ……という、若干のあまのじゃくな気持ちを抱えながら読み始めたのですが、

「むちゃくちゃ面白い!!」

と思いながら一気に読んでしまいました。漫画の内容は、ゲームの印象的なシーンから想起されたシリアスな内容のものから、ギャグタッチなもの、ゲームを遊ぶ子供時代の作者を描いたコミックエッセイまで様々なものがあるんですが、そこを掘り下げるか! みたいな内容の作品が多くて、「そうそう、MOTHERのこういうところが好きだった!」と、何度も共感してしまいました。

中でもよかったのが阿部共実さんの作品。悪役キャラクターのポーキーを主軸に描かれていたんですが、「これはすごいわぁ……」とため息が。

他にも、吉田戦車さんは30年経っても献立ネタなのかとか、福地翼さんの戦闘が省略された際に実際に起こっていることを描いた作品とかがツボでした。

これだけ多様な作品があれば、中には「この人全然MOTHERのこと分かってないじゃん」みたいな、めんどくさいファンにありがちな上から目線の感想を抱いてしまうこともありそうですが、全然そうならなかったのも素晴らしいなと。逆に遊んだ人の数だけその人にとってのMOTHERがあることに嬉しくなってしまいました。

この本は、僕にとって『MOTHER』は特別な作品だったんだと再確認させてくれました。そして、これからもずっとMOTHERのファンでいたいと思わせてくれたのでした。ずっと語ることができる作品って本当にいいですね。

[本]Pollyanna ポリアンナ(ほぼ日の詳細ページ)
HOBONICHI MOTHER PROJECT…現在、渋谷PARCOにある「ほぼ日曜日」ではPollyanna発売を記念して「ア・メリカさんの描いたMOTHERの絵。」という展覧会が開催中です。7/12まで。

MOTHERシリーズ フィギュアコレクション(2010.7.22)

MEMOレポート

先日Twitterでも報告しましたが、現在東京国立近代美術館で開催されている「ピーター・ドイグ展」に行ってきました。

ピーター・ドイグはイギリス人の現代画家です。正直に言うと僕は最近まで全く知らなかったのですが、テレビで『ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ』という作品が紹介されているのを見て、実物を見てみたくなったんですね。ところが、行こうと思っていた矢先に休止になっちゃって、今月無事に再開されたのでようやく見に行けたのでした。

会場は撮影OKでSNS等にアップロードもOKとのことだったので、ブログでもいくつか写真を添えて紹介してみます(クリックすると高解像度画像になります)。写真では分かりづらいですがどの作品もかなりの大きさがあります。

『ブロッター』
『ブロッター』という作品。氷の張った湖とその背景が層のように見え、独特の空間の広がりを感じます。

『ブロッター』のアップ
中央の人物のアップです。白い絵の具の塊が点在しています。

『のまれる』
『のまれる』という作品です。2015年に2600万ドル(約30億円)で落札されたんだとか。ほへー。

『ロードハウス』
『ロードハウス』という作品です。この絵が今回の展示ではいちばん好きでした。見た瞬間、「なんじゃこりゃー」って思いましたもん。人の生活が垣間見える家が描かれた中央の層の上に、重く広がる青い層は何を意味しているんでしょうか。「天地創造」の地裏の世界を思い出してしまいました(あ、ゲームの話です……)。

『ロードハウス』のアップ
中央の家をアップで。ディテールがすごいなー。

『ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ』
そしてこれが『ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ』です。メインビジュアルにもなっている幻想的な作品です。タイル貼りのダム湖に佇む怪しげな2人に目が行きがちですが、左右に配された樹木の描写もすごいです。

『夜のスタジオ(スタジオフィルムとラケット・クラブ)』の一部分
『夜のスタジオ(スタジオフィルムとラケット・クラブ)』という作品を下から。近年の作品は初期作品に比べると薄塗りになっています。

現代のアートシーンで活躍されている方の作品というと、文脈を理解しないで見てもさっぱり分からない一見さんお断りなイメージがありましたが、ピーター・ドイグの作品は僕みたいな人がいきなり見に行っても十分楽しく鑑賞できたのがすごいなと思いました。とは言え、『のまれる』なんかは何がすごいのか全然分からなかったりもするんですけどね。

幻想的でありながら、そこに描かれているのはファンタジーではなく、地に足が付いているようにも思えます。こういう世界の描き方もあるんだなぁと思いました。

ピーター・ドイグ展は会期を延長し、10/11まで開催中です。

TOPICSBOOK

漫画家、イラストレーターとして活躍されていたフジモトマサルさんの仕事を1冊にまとめた書籍が発売されました。

フジモトマサルの仕事
[本]フジモトマサルの仕事(コロナ・ブックス 221)(amazon)
平凡社 2020.4.27発売 1800円+税
ISBN:9784582635201

これまで様々な媒体で発表されたイラストや文章から、1994年のデビューから2015年に亡くなるまでのフジモトさんの仕事ぶり、人となりを振り返ることができる内容になっています。

ブルボン小林さんや穂村弘さんなど、生前に交流のあった方によるエッセイ、村上春樹さんによる寄稿も掲載されています。

本の中では単行本未収録の作品や、雑誌での記事もいくつか掲載されています。僕は一応フジモトファンではあるので、ある程度はチェックをしていたつもりでしたが、中には全然知らないものもたくさんありました。特に驚いたのが雑誌『イラストノート』(2009年12月号)に掲載されていたという制作風景の記事、『書評王の島』vol.5(2012年)に掲載されたロングインタビューの記事の2つ。フジモトさんが亡くなった時、僕は闘病していることすら知りませんでしたが、3年も前に病気について語っているインタビューがあったんですね。

巻末にはフジモトマサル略年譜という、フジモトさんの仕事を時系列にまとめたページがあり、生い立ちに始まり、これまでどんな雑誌やWebに連載を持っていたか等がまとめられています。ただ、連載に関しては一部載っていないものもあるっぽいです。フジモトさんの著作の中には連載をまとめたものなのか、描き下ろしなのかが分からないものがいくつかあるので、その辺もフォローして欲しかったです。ここは自分で調べるしかないか…。
 

ここからはせっかくの機会なので、個人的な話。僕がフジモトさんのファンになった経緯を振り返ってみたいと思います。と言っても、フジモト作品との出会いについてははっきり覚えていないんですよね。このサイト用のネタ集めをする中で見つけたんだと思います。

当サイトでフジモトさんの名前が最初に出てくるのが、2002年1月21日。「どんぐりトピ」という気になったニュース記事を羅列で紹介するページで、『スコットくん』を紹介したのが最初のようです(と言ってもAmazonへのリンクをしただけ)。その後、2002年6月1日に『こぐまのガドガド』を取り上げてちょっとした感想を書いています。

その後、ちゃんとしたトピックスとして著書を紹介したこともありますが、確認してみたところ、ブログ化前の時代に2回だけしか取り上げていませんでした。

[本]ウール101%/フジモトマサル 2004.2.11
[本]という、はなし/吉田篤弘・文、フジモトマサル・絵 2006.3.6

なんでこんなに少ないんだっけと思ったら、あれですよ。僕のサイトで取り上げることによって、フジモトさんの本を"キャラクター絵本"だと勘違いしてほしくなかったから、だったんでした。なので、取り上げる際はいつもメモのカテゴリーで報告をしてたんですよね。

メモカテゴリーでは購入時の報告の他にも、イベントレポートや訃報の際の文章も書きました。

穂村弘×フジモトマサル トークイベントに行ってきた 2009.9.18
終電車ならとっくに行ってしまった 2010.12.28
フジモトマサルさん。 2015.11.29

イベントのことは特に記憶に残っています。"これを逃すと2度とないのでは"なんて書いてますが、実際には2011年に名久井直子さんとのトークイベントも開催されています。ただ、そっちには参加できなかったので、僕にとっては本当に2度とない機会となってしまったのでした。この時に話題に出た、解剖台の上にミシンと雨傘が乗っているイラスト、今回の本のカバーをめくった表紙にも使われていて「おおっ」となりました。
 

フジモトさんのことで、どうせならもう1つ書いておきたいことがあるので続けます。それは絵の上手さについて。フジモトさんの絵って本当に上手いなと僕は思っているんですが、そもそも絵が上手いってどういうことなんだろうっていうのをフジモトさんには勝手に教えてもらったんですよ。

それはフジモトさんの著作、『ダンスがすんだ 猫の恋が終わるとき』と『キネマへまねき みぎからよんでもひだりからよんでも』でのことです。

『ダンスがすんだ』と『キネマへまねき』
▲最近、『キネマへまねき』も手に入れました(それまでは図書館で借りてた)。

『ダンスがすんだ』はフジモトさんの本の中でいちばんと言ってもいいくらい好きな作品なんですが、簡単にどういう内容なのか説明しますと、見開きで回文とその内容をイラスト化したものが載っていて、それが全編に渡って1つのストーリーとして繋がっているんですね。

この作品、既に絶版になってしまっていたフジモトさんのデビュー作、『キネマへまねき』を再発売するに当たり、ストーリーに若干の変更を加えた上で全編描き直したものなんです。発売にはちょうど10年の開きがあるため、見比べることでデビューから10年経た1人のイラストレーターがどれだけの進化を遂げたのか、如実に実感することができるというわけです。

ちなみに当時、フジモトさんご本人は『ダンスがすんだ』についてこのように語っています(当時のフジモトマサル公式サイトの日記より引用)。

まことに遺憾ながら、画力が大変上達してしまったうえに
ドラマチックな演出を凝らした為、
旧バージョンとくらべて中身の迫力が段違い。
8ミリ自主制作映画と35ミリフィルム劇場用映画ぐらいの違い、
戦艦大和と宇宙戦艦ヤマトぐらいの差があります(当社比)。

ご本人も画力が大幅に上達したという自信があったようです(笑)。実際にどんな感じなのか、1組のイラストだけ引用させてください。

20200505-02

まずは『キネマへまねき』(1994, 徳間オリオン, P84-85)から。これは、人間にこき使われていた猫たちが、団結して立ち向かおうと決意を固めるシーンです。
会議室のような場所に猫たちが集まって話し合っている様子が見て取れます。状況を説明するイラストとしては十分だと思うし、ほのぼのとしたタッチもストーリーとのコントラストがあって、これはこれでいいイラストだなぁと思うんですよ。

20200505-03

続いて『ダンスがすんだ』(2004, 新潮社, P84-85)の同じ場面を描いたイラストです。一目見て、絵としての完成度の高さが全然違います。同じ場面を描いているはずなのに、なぜこうも印象が違って見えるのか、じっくり見比べてみるといくつかの違いに気づきます。

まず大きく違うのがカメラアングルが猫の目線により近くなったことで、部屋の天井が描かれているところです。その天井にはむき出しのパイプが数本描かれていて、よく見ると水漏れしている箇所もあります。

これらの描写により、ここは会議室ではなくて、地下にある今は使われていない空き部屋を秘密のアジトにして夜な夜な集まっているんじゃ、なんて想像させられます。

また、天井とそこから低く吊り下げられた照明により、空間的な閉塞感が生まれ、猫たちの行き場のない重苦しい心情が伝わってくるようです。

2枚の絵とも、壁には旗とリーダー的な人物と思われる肖像が飾られています。ただ、『キネマ~』の方はお飾りの王様のような猫が描かれているのに対し、『ダンス~』の方では眼帯をした目つきの悪い猫が描かれています。

そのため、この集まりは目的のためには非合法な手段も厭わないような組織になっていくのではないかといった、その後の展開に不穏な空気を感じさせることにもなっています。

以上のような情報量の違いがありながら、絵の描き込み量にはそこまでの違いを感じさせないのもすごいです。いかにシンプルに、何を描き、何を描かないのかがきちんと整理されていることが分かります。

上手い絵を描くっていうのは、きちんとしたデッサンで綺麗な線で描くことだけじゃないんだと、2つの絵を見比べることで気づかせてくれたのです。

[本]フジモトマサルの仕事(平凡社の紹介ページ)
フジモトマサルの仕事(公式サイト)

TOPICSBOOK

デビュー30周年を迎えた本秀康さんのイラストレーション集が発売されたので紹介です。

MOTO HIDEYASU MUSIC BOOK ~本秀康 音楽イラストレーション集
[本]MOTO HIDEYASU MUSIC BOOK ~本秀康 音楽イラストレーション集(amazon)
ele-king books/Pヴァイン 2020.4.22発売 2700円+税
ISBN:978-4-909483-54-6

本さんのイラストレーション集は2000年の『ハロー・グッドバイ』、2008年の『MOTO book ~本本~ 本秀康イラストレーション集』に続いて3作目です。今回は"音楽イラストレーション集"と銘打ち、レコード、CDのジャケットやイベントポスター、雑誌のカバーイラストなど、音楽関係のお仕事からセレクトされた作品が収録されています。

音楽というと、本さんは2014年に「雷音(らいおん)レコード」という7インチレコード専門のレーベルを立ち上げました。本さん本人がジャケットを描きたいと思った曲を選定し、実際にレコード化して販売するという企画です。これまでに20作以上が発売されています。

本にはもちろん雷音レコードで手掛けたジャケットイラストがどーんと収録されているんですが、どのイラストもすごくいいんですよね。曲ごとにイラストのアプローチも違っていて、楽しんで描いていることが伝わってきます。
正直ジャケットイラストを描くだけで大変だと思うのに、レコードの企画から販売までするってすごいことだと思います。大好きな音楽の為だからこそ成せることなんでしょうか。

イラストの他にceroの高城晶平さん、前野健太さん、カネコアヤノさんとの対談が載っていて、高城さんとのトークでは本の表紙にもなっている『WORLD RECORD』のジャケットの裏話などが語られています。若いミュージシャンの方達との関係性が垣間見られるやり取りが楽しかったです。

[本]MOTO HIDEYASU MUSIC BOOK ~本秀康 音楽イラストレーション集/本秀康・著、松永良平・編(ele-king booksの紹介ページ)…ちなみに先着特典としてディスクユニオンでは本さんの愛犬、モコゾウのクリーナークロスが、HMVではポストカード、タワーレコードではステッカーがついてきます。
本秀康公式サイト おもしろ帝国

[本]ちきゅうのへいわをまもったきねんび/本秀康(2012.3.20)

MEMO

「今日はあれをしよう!」と思って、TODOリストまで作って、いろいろ雑用を済ませていざっていう時に死ぬほどやる気がなくなって、1つも何もしないまま終わるのはなんでですか? 今月はいつもに比べて時間があったはずなのに、いつものように終わってしまいました。

何なんだろう僕の人生は……とか思ってしまいますが、それでも健康で1日過ごせたんだから、これほどありがたいことはありません。世の中、なんだかギスギス感がすごいですが、早くのんきな感じになるといいですね。

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