MEMO

佐野研二郎展フライヤー
▲8年前に見に行った個展のフライヤー(裏面)

今、佐野研二郎さんについて思うことを書く場合、話が多方面に展開しすぎて焦点がぼやけ、何が言いたいのか分からない文章になってしまうのは確実なので、何も書かないというのが正解なのかもしれません。
それでも敢えて、何か書いてみたいと思います。

今回の騒動、発表されたオリンピックのエンブレムがダサいと話題になっているのをネットで見て、「たしかになんか微妙だな」と思ったのが最初です。その後すぐ、佐藤研二郎さんがデザインしたことを知り、「こういう作風もやるんだ」と意外に思ったことを覚えています。

というのも、佐野さんは広告の分野で活躍するアートディレクターの中でも特にキャラクターを使った展開を得意とする人で、僕的にはやっぱり、auの「LISMO」とかTBSの「BooBo」とかの人っていうイメージが強かったからなんですね。

そして最初の疑惑、ベルギー人デザイナーからの盗作疑惑が持ち上がりました。そのときは、「佐野さんが盗作なんてするわけないでしょ」と思いました。だって、佐野さんって言ったら超有名アートディレクターですよ? それに、こういった世界的に注目を集める作品を発表すると、「私の作品に似ている!」なんて言い出す人が大なり小なりいるものです。特に今回のような要素をそぎ落としたシンプルなデザインならば尚更です。

この頃にはエンブレムも見慣れてきて、だんだんかっこよく見えてきました。ところがそういう人は少数派だったみたいで、ネット上では”デザインが気に入らないから疑惑に便乗して叩いてしまえ”的な流れが目につくようになりました。それとこれとは話が違うと思ったし、何か一言つぶやいておきたいと思いました。
でも、それって単なる「根拠のない擁護」と取られちゃうのかなぁと思い直し、しばらく様子を見ることにしたのでした。

しかし、事態は落ち着くどころか、火の手はネットの中だけでは収まらず、テレビや新聞などのメディアをも巻き込んでの空前の大炎上状態へと突入していきます。

そのきっかけとなったのが、サントリーのトートバッグのデザイン盗用疑惑です。これは疑惑というよりも、誰がどう見ても100%盗用だと言わざるを得ないものでした。そして、当初の疑惑を払拭するべく発表したはずエンブレム原案と、同時に改めて公開されたエンブレムの展開例として作られたイメージ画像それぞれに新たな疑惑が持ち上がります。イメージ画像については他人の写真を許可を得ず使用したものであったことが明らかにされ、ついにはエンブレムの使用が中止されるに至りました。

この展開はまったくの予想外なもので、ただただ衝撃でした。そんな雑すぎる仕事をしていたなんて、という驚きもそうですが、バッシングのされ方とか、世間のデザインに対する考え方とか、デザイン業界の常識とか、何が正解なのか分からなくなるという点でも不安な気持ちになりました。

結局のところ、佐野さんは実力もないのにスターデザイナーとして神輿に担がされたただの身の程知らずで、僕はそんな作り物のネームバリューに目がくらみ、ありがたがってたおバカさんだったのでしょうか。

「そんなわけない」

って、思うんですけどね……。

佐野さんは、9月1日付で自身のサイトに「エンブレムにつきまして」と題した文章を発表しました。でもこの文章は、言いたいことは分かるんですが正直物足りないものでした。まず「なんでテキストが画像になってるの?」っていう点がありますよね(これは、自分にとって都合の悪い文章が検索サイトに引っかからないようにしたい人が行う典型的なやり方です)。それに、結局のところ謝罪したのはトートバッグの件だけで、他の作品についてはどれが模倣でどれが違うのか、詳しい説明がないまま、被害者的な側面だけを強調した文章になってしまっています。

これだけの騒動の中苦しい状況だとは思うけど、どういう経緯があったのかなど、時期を見て丁寧に説明してほしいなと思います。
エンブレムの問題はともかく、佐野さん自身の問題としては本人の説明なしにはすっきりしないと思いますし。

ほんとに、何が正解なんでしょうね?