MEMO

文藝春秋刊「いきもののすべて」P6より

漫画家・イラストレーターのフジモトマサルさんが11月22日にお亡くなりになりました。46歳。慢性骨髄性白血病だったそうです。

病気だったことも全く知らなかったし、発表はあまりに突然すぎでした。

フジモトさんは動物を擬人化した主人公の漫画作品を多く発表されていました。こうしたモチーフは、一見子供向けっぽくなったり、かわいくなりすぎたりしがちですが、シンプルなのに深みを感じるイラストにシニカルでニヤっとさせられる台詞が乗り、他にはない立ち位置の世界観を構築されていました。

回文やなぞなぞといった、言葉遊びが得意なことでも知られていて、回文物語における金字塔作品「ダンスがすんだー猫の恋が終わるとき」の発売時に新潮社「波」(2004年9月号)に寄せた本人による紹介文(Internet Archiveより)に、そうなった経緯が語られています。

著作の装丁は、初期はクラフト・エヴィング商會の吉田篤弘さん・吉田浩美さんコンビが、後期は名久井直子さんが主に手掛けていました。そのこだわりの中に文芸の臭いを感じさせてくれて、そういった類いの本をほとんど買わない僕の本棚を鮮やかに彩ってくれました。

新刊が発売されると書店にサイン本を書きに回られていて、そのことをうっかり忘れて近所の本屋で買ったり、ネットで注文してしまったりして、あとで後悔するというのがあるある話でした。

今年公開された村上春樹さんの期間限定サイト「村上さんのところ」にてイラストを担当。後に発売された書籍版でも描き下ろしイラストが収録されました。村上さんのファンの間では、安西水丸さんの後継として今後もタッグを組まれるのではと好意的に受け取られていて、これを機に日本を代表するイラストレーターへと羽ばたいていくのでは……なんて未来を想像していた矢先の出来事だったのが残念でなりません。

プライベートでは結婚・離婚歴があったとのこと。元奥様で版画家・コルク人形作家の片岡まみこさんのInstagramを拝見してはじめて知りました。

フジモトさんは僕にはまったくなくて、欲しいと思っていたものをすべて持っていた憧れの人であり、理想の人でもありました。もう新しい作品が読めないと思うと悲しくて仕方がありません。

フジモトさんの著書たち