コチョチョコくん(上)

かいそう

チョコ2つ
お礼にチョコを2つもらった。
2つか…。
 
 
と思っていたら、チョコがもぞもぞと動いたような。
 
ぴょこ、ぴょこ!
 
顔が出た
わわ、チョコに顔が出てきた!
 
「驚かないで。ぼくたちはコチョチョコくんっていうんだ。
ぼくたちを食べてごらんよ。おいしいよ!」
 
え、食べるったって、喋ってるし、手足や顔が、ねえ、顔があるよっ!
とか思っているうちに、チョコの片一方が
ぼくの口めがけて飛び込んで来ちゃった。
 
ぱく! もぐもぐもくもぐ…。
お、おいしい…。
 
おいしい…
 
 
「ほらねっ」
ほらねっ
もう片一方が得意げにそう言いました。
 
「もっと食べたい?」
「…食べたい」
「じゃあ、いいことを教えてあげるよ。
ぼくをタッパーに入れて冷蔵庫に入れてごらん。
一晩たてば分裂して増えてるから」
 
半信半疑で、言われたとおりやってみました。
明くる朝、言われたとおりコチョチョコくんは2人になっていました。
 
「ほら、増えたでしょ。
さあ、1つお食べ」
 
そう言うと、コチョチョコくんの1人がまた口の中に飛び込んできました。
 
ぱく! もぐもぐもぐもぐ…。
口の中に甘くて香ばしい香りがふわっと広がります。
香りとともに、すごく幸せな気分も体中に広がっていくのが分かります。
 
はーと
「おいしい…」
 
1人になったコチョチョコくんを再びタッパーに入れ、冷蔵庫にしまいました。
その日から、毎日1粒コチョチョコくんを食べる日がはじまりました。
本当は、2人に分裂したコチョチョコくんをもう1日寝かせておけば
4人に分裂するんだから、その方が得だと思うのですが、
我慢できずに食べてしまうのでした。
 
 
そんな日々がしばらく続きましたが、
どうにか我慢に打ち勝ち、ついには
コチョチョコくんを100人まで増やすことができたのでした。
 
増えすぎても持てあましてしまうので、
タッパーには少しだけ入れておいて、
残りのコチョチョコくんたちは部屋の中に居てもらうことにしました。
みんなで走り回ったり、わいわいと遊んでいます。
そのうちの1人がぼくのところにやってきてこう言います。
「ね、ね、ぼくたちのこと、食べたければ言ってね」
食べてね
 
そんな賑やかな中、ぼくは冷蔵庫からタッパーを取り出します。
タッパーの中のコチョチョコくんの1人は
最初にもらったコチョチョコくんでした。
 
 
次回へ続く)

Posted by PIT