10円ロケット
ぼくはきみのポチ
- 2009年2月3日(火)1:08
- [かいそう]

それはいつものように部屋の中を駆けずり回っていたとき、
不意に頭上からやって来たのでした。

ゴチン!
「いたたっ! あ、あれ、あれ?
ここはどこだ!? 見たことない部屋の中だ。
ここで何をしてたんだっけ???」

立ち上がり振り返るとそこには愕然とした表情で立ち尽くす人の姿が。
「ああ、ついにこの日が来てしまったのね」
その女性は話し始めました。
「あなたは1年前この星にやってきたの。
その時にね、あなたはピゴリン様に刃向かったのよ」
「ピゴリン様?」
「ピゴリン様はその絶対的な力をもってこの星を支配している存在。
あなたは私たち人民を救おうとしてある計画を立てたの。
でも計画は失敗し、ピゴリン様の魔法により記憶を封鎖され、
自分を犬だと思い込まされたあなたは、
私に引き取られ、今日までこの星で犬として暮らしてきたの。
たぶん今のショックでかつての意識が戻ったんだと思う」

何が何だか分からないけど、とにかくすごい話のようだぞ…。
「あなたの乗ってきたロケットが
あの窓に見える倉庫に保管されてるの。
すぐにでもこの星から脱出した方がいいわ」
ぼくには唐突すぎて事態を飲み込むことが全然できなかったけど、
自分が取るべき行動だけはどうにか理解し、
これまで面倒見てくれた(と主張する)彼女に一言お礼を告げ、
部屋を出ようとしました。
「待って!」
彼女が呼び止めます。
「ごめんなさい、あなたの名前を聞いていなかったから」
「あ、”10円”という名前です」
「そうなの…」
再度頭を下げ、出口へ向かおうとするぼく。
「あ、ちょっと!」
再び呼び止める彼女。振り返ると、泣いてる!?

「ど、どうしたんですか!?」
「私、この1年あなたと一緒にこのうちで暮らしてきて、
あなたのこと、本当の…家族なんだって思うようになっていたの。
最後に1度、抱きしめさせてもらってもいいかな」
「えっ!」
そんなこと言われても…。
今のぼくにとって、目の前の彼女は
さっきはじめてお会いした知らない人なわけだし。
「ごめんなさい!」
慌てて駆け出し、出口のドアを開いた。
「あ、そこは出口じゃ…」
そのドアは出口ではなく、別の部屋へと続く入口でした。
目の前に広がった部屋……。


自然と涙があふれる。
「ハナちゃん!」
気がついたらぼくは彼女に抱きついてしまっていました。

ロケットの中から、小さくなる星を眺めながらつぶやきました。
「ハナちゃん、いつかまたこの星に戻ってくるからね。
いつまでも、ぼくはきみのポチだから」

10円くんのおしごと
- 2009年1月24日(土)14:48
- [にちじょう]
ぼくはいつも暇です。だって、お客さんが来ないからね。
この場所でロケット屋をはじめて、
まともなお客さんって、何人来ただろう…。
ロケット屋と言ってもロケットそのものを売ってるわけじゃなくて、
宇宙観光業です。
ぼくの自慢のロケット、「タコチャン号」に乗せて、
お客様を宇宙の旅へご案内しています。
宇宙っておもしろいのになー。
そのへんがイマイチ伝わってないっぽいです。
料金だって最初の頃は1回1000万円だったんだけど、
誰も来ないから10円にしてみたのに、結局誰も来ないし。
すっごくお買い得だと思うんだけどなー。
なのでいつも、お店を閉めて
1人でぶらっと宇宙へお出掛けしちゃうのです。
あ、タコチャン号がいるから1人じゃなかったね。
ごめんね、タコチャン号。

なるとのちから
- 2009年1月15日(木)6:00
- [にちじょう]
なんでだろ、なんでだろ。
悲しくないのに涙が出るよ。
なんでだろ、なんでだろ。
泣きたくないのに止まらないよ。
涙と言えば、こんなことがあったな。
そう、あれは
ある何もない星で、現地の子とカップラーメンを食べていたときのことだった。
あの時は何であんなに泣いてたんだっけ。
理由は忘れてしまったけれど、
とにかく2人で延々と
泣きながらラーメン食べていたことを覚えているよ。
ついこの間のことのように、鮮明に。
食べ終わって歩いていると、
その子のひざに”なると”がくっついているのを発見したんだ。
なんでなるとがそんなところに?
理由は分からないけど、その後2人で笑ったな。
何がそんなにおかしかったのか、今となっては分からないけど
2人でけたけた笑ってた。
――あれ、いつの間にか泣き止んでる。
涙が止まらなくなったときは、なるとのことを思い出すといいみたいだよ。
時間旅行は…
- 2009年1月12日(月)6:11
- [にちじょう]
「え! 宇宙へ旅行したいんじゃなかったんですか?」
「イーエ、誰もそんなこと言ってないヨ!」
久々のお客様だと思ったのに、どうも話がかみ合いません。
「私は33年前に行きたいのデス!」
え、33年前??
いやうちはロケット屋で宇宙に行けるロケットはありますが、
タイムマシンにはなりませんのでタイムトラベルはちょっと…。
「そこをナントカ!」
「いや無理ですよ」
「ナントカ」
「無理」
「代金の10円を先払いしますカラ」
「いやいや、先に受け取っても無理なものは無理ですって」
なかなか諦めてくれない。まいったなー。
でも何度も説明していたら、どうにか納得してくれたようでした。
「そうですかー。ムリなのですね。
じゃあかわりにお伺いしたいのですが、
アナタは33年前のこと、覚えていますか?」
「え? 覚えているというか、その時は
まだ生まれていないので何も…」
「やっぱりそうですか。ザンネンです。
失礼いたしました…」
最後におかしなことを聞かれたけど、
やっと帰ってくれました。
久しぶりのお客様だと思ったんだけどなー。
あ、10円もらったままだった!
「お客さーん!」
あれ、もういない…。

(05/7/22-)