かいそう

わん!わん!わん!
それはいつものように部屋の中を駆けずり回っていたとき、
不意に頭上からやって来たのでした。

ゴチン!
ゴチン!

「いたたっ! あ、あれ、あれ?
ここはどこだ!? 見たことない部屋の中だ。
ここで何をしてたんだっけ???」

2人
立ち上がり振り返るとそこには愕然とした表情で立ち尽くす人の姿が。

「ああ、ついにこの日が来てしまったのね」
その女性は話し始めました。

「あなたは1年前この星にやってきたの。
その時にね、あなたはピゴリン様に刃向かったのよ」

「ピゴリン様?」

「ピゴリン様はその絶対的な力をもってこの星を支配している存在。
あなたは私たち人民を救おうとしてある計画を立てたの。
でも計画は失敗し、ピゴリン様の魔法により記憶を封鎖され、
自分を犬だと思い込まされたあなたは、
私に引き取られ、今日までこの星で犬として暮らしてきたの。
たぶん今のショックでかつての意識が戻ったんだと思う」
ピコリン様

何が何だか分からないけど、とにかくすごい話のようだぞ…。

「あなたの乗ってきたロケットが
あの窓に見える倉庫に保管されてるの。
すぐにでもこの星から脱出した方がいいわ」

ぼくには唐突すぎて事態を飲み込むことが全然できなかったけど、
自分が取るべき行動だけはどうにか理解し、
これまで面倒見てくれた(と主張する)彼女に一言お礼を告げ、
部屋を出ようとしました。

「待って!」
彼女が呼び止めます。

「ごめんなさい、あなたの名前を聞いていなかったから」
「あ、”10円”という名前です」
「そうなの…」

再度頭を下げ、出口へ向かおうとするぼく。
「あ、ちょっと!」
再び呼び止める彼女。振り返ると、泣いてる!?
涙

「ど、どうしたんですか!?」

「私、この1年あなたと一緒にこのうちで暮らしてきて、
あなたのこと、本当の…家族なんだって思うようになっていたの。
最後に1度、抱きしめさせてもらってもいいかな」
「えっ!」

そんなこと言われても…。
今のぼくにとって、目の前の彼女は
さっきはじめてお会いした知らない人なわけだし。

「ごめんなさい!」
慌てて駆け出し、出口のドアを開いた。

「あ、そこは出口じゃ…」

そのドアは出口ではなく、別の部屋へと続く入口でした。
目の前に広がった部屋……。
部屋

POCHI&HANA

自然と涙があふれる。
「ハナちゃん!」
気がついたらぼくは彼女に抱きついてしまっていました。

ロケットの中から、小さくなる星を眺めながらつぶやきました。
「ハナちゃん、いつかまたこの星に戻ってくるからね。
いつまでも、ぼくはきみのポチだから」
宇宙から