にちじょう

ぼくはいつも暇です。だって、お客さんが来ないからね。
この場所でロケット屋をはじめて、
まともなお客さんって、何人来ただろう…。

ロケット屋と言ってもロケットそのものを売ってるわけじゃなくて、
宇宙観光業です。
ぼくの自慢のロケット、「タコチャン号」に乗せて、
お客様を宇宙の旅へご案内しています。
宇宙っておもしろいのになー。
そのへんがイマイチ伝わってないっぽいです。

料金だって最初の頃は1回1000万円だったんだけど、
誰も来ないから10円にしてみたのに、結局誰も来ないし。
すっごくお買い得だと思うんだけどなー。

なのでいつも、お店を閉めて
1人でぶらっと宇宙へお出掛けしちゃうのです。
あ、タコチャン号がいるから1人じゃなかったね。
ごめんね、タコチャン号。

タコチャン号

にちじょう

泣き顔 

なんでだろ、なんでだろ。
悲しくないのに涙が出るよ。
なんでだろ、なんでだろ。
泣きたくないのに止まらないよ。
 
 
涙と言えば、こんなことがあったな。
そう、あれは
ある何もない星で、現地の子とカップラーメンを食べていたときのことだった。

ラーメン

あの時は何であんなに泣いてたんだっけ。
理由は忘れてしまったけれど、
とにかく2人で延々と
泣きながらラーメン食べていたことを覚えているよ。
ついこの間のことのように、鮮明に。

食べ終わって歩いていると、
その子のひざに”なると”がくっついているのを発見したんだ。
なんでなるとがそんなところに?

笑った 

理由は分からないけど、その後2人で笑ったな。
何がそんなにおかしかったのか、今となっては分からないけど
2人でけたけた笑ってた。
 
 
――あれ、いつの間にか泣き止んでる。
涙が止まらなくなったときは、なるとのことを思い出すといいみたいだよ。

にちじょう

「え! 宇宙へ旅行したいんじゃなかったんですか?」
「イーエ、誰もそんなこと言ってないヨ!」

久々のお客様だと思ったのに、どうも話がかみ合いません。

「私は33年前に行きたいのデス!」
33年前 

え、33年前??
いやうちはロケット屋で宇宙に行けるロケットはありますが、
タイムマシンにはなりませんのでタイムトラベルはちょっと…。

ちょっと…

「そこをナントカ!」
「いや無理ですよ」
「ナントカ」
「無理」
「代金の10円を先払いしますカラ」
「いやいや、先に受け取っても無理なものは無理ですって」

なかなか諦めてくれない。まいったなー。
でも何度も説明していたら、どうにか納得してくれたようでした。

「そうですかー。ムリなのですね。
じゃあかわりにお伺いしたいのですが、
アナタは33年前のこと、覚えていますか?」
「え? 覚えているというか、その時は
まだ生まれていないので何も…」
「やっぱりそうですか。ザンネンです。
失礼いたしました…」

最後におかしなことを聞かれたけど、
やっと帰ってくれました。
久しぶりのお客様だと思ったんだけどなー。
あ、10円もらったままだった!
「お客さーん!」
あれ、もういない…。

10円