忘れたころの失礼インタビューvol.4
糸井重里 岩田聡 VS 風のように永田
ニンテンドウ64といったら、あれだ、そう、『MOTHER3』!! で、あれだ。あの釣りの人。掘ったりとか。あの人が、そう、糸井重里。どうなの?
そんな人のために、またしても本誌、風のように永田が突っ込む。ええ、ノンフィクションです。
これまでのあらすじ
大の『MOTHER』ファンである風のように永田は、『3』の開発の知らせをうけて、開発者の糸井重里を直接取材する。しかし、糸井は虚実混同の発言を乱発し、永田を煙に巻く。両者の戦いはじつに4回目。
糸井重里(以下糸井) タータタ、タタタ♪ タータタ、タタタ♪
風のように永田(以下風永) ……なんですか、それ?
糸井 エレクトリカルパレード。タータタ、タタタ♪
風永 ……。
岩田聡(以下岩田) ……。
糸井 さあ、今日は岩田さんが張り切るぞ。岩田バクハツ!!
風永 ……。
糸井 サルガンデン!!
風永 ……サ、サルガンデン!
糸井 俺が”サル”で、岩田が”ガン”で、おまえが”デン”だ!
風永 ……よしっ!
岩田 それ、どういう意味です?
風永 よくわかんない……。
糸井 ケンカ売ってんのか?
風永 また、こんなんか。え〜、始めます。まえのインタビューから2ヶ月経ちました。それで、そのあいだにできたものが、ここにある写真……あの……コレだけ?
一同 (笑)。
風永 主人公の少年とか、かなり雰囲気変わりましたね。いただいた資料によると、主人公に関してはまだ、オーディション段階だと。
糸井 そ。まえのヤツはオーディション落ち。クビ。交通事故で出演できなくなりました。
風永 また適当なことを。ロゴも前作とはガラッと変わりましたね。あれ? サブタイトルがない……。
岩田 商標権の問題でどうもキマイラは使えないらしいんですよ。
糸井 キマイラ(キミら)はなにを考えてるんだいったい!!
風永 それは、前回言いました。
一同 ……。
風永 で、おきまりの質問ですが、完成度は? 発売日は? 年内?
岩田 11月に任天堂の展示会があるんですが、そこでは完成品に近いモノを見てもらえると思います。
風永 おっ、いい話ですね。
本郷(任天堂広報) いいですねぇ。
岩田 あと、糸井さんのシナリオパートのほうもほぼ完成しました。
風永 おお!! シナリオはできた。
岩田 最後のシナリオは、糸井さん、サイパンで書かれたんですよ。
糸井 サイパンで泳ぎもせずに、ずっと書いてたからね。
風永 それにしては、いい色に焼けてますが……。
糸井 これは釣り焼け。
風永 遊んでんじゃん!
一同 (笑)。
風永 マップ上の敵と接触すると、戦闘画面に切り替わるんですか?
岩田 戦闘画面になります。ただ、どんな場合でもなるとは限らない。『2』で一発消しがあったように。
風永 ……っていうのは前回のインタビューで聞きましたんで、もっとこう、踏み出した情報を。
糸井 社長、一歩!! 赤絨毯!!
本郷 昔は便所に”一歩踏み出せ”って書いて貼ってましたなあ。
糸井 あった、あった。”思ったよりキミのは短いぞ”とか。
風永 便所の話はいいとして、戦闘のシステムを。
岩田 (笑)。マップ画面で敵と接触すると、戦闘画面に切り替わるんですが、接触時の状況によって戦闘が変化します。敵のどこにぶつかったかとか、どんな早さでぶつかったのかとか、こっちはどんな装備だったかとか。それでたとえば自分が敵に突き飛ばされて倒れた状態から始まるかもしれないし……。あっ言っちゃった。
一同 (笑)。
風永 なるほど。あの、すごい基本的なことなんですけど、主人公は、ジャンプとかするんでしょうか?
岩田 それは、ジャンプしそうなものがジャンプしないと変でしょ。
糸井 (小声でささやくように)少年はジャンプする……。
風永 え、なんです?
糸井 少年ジャンプ。
風永 ……。
岩田 ……。
糸井 いまや週間アスキーだな!!
風永 まあ、週刊アスキーの話はさておき、これもう動いてます?
岩田 動いてますよ。DDで。
風永 DDで!? DDってできてるんですか、ていうか、あるの?
本郷 ありますよ(笑)。
風永 見せて。
一同 (笑)。
風永 でも、なんでDDで動いてるんです? 早くないですか?
岩田 何度も作れるようにマップをニンテンドウ64で作ってますから。なぜ実機で作るかというと、作ってすぐ遊んでみたいから。
風永 なるほど。システムのほうはどうですか?
岩田 だいたい固まってます。戦闘をもうちょっといじるかな。
風永 なるほどぉ。じゃ、シナリオもでき、シナリオもでき……。
岩田 あとはもう、作るだけさって感じですね。
糸井 なあんだ。
風永 なあんだ。
糸井、岩田、風永 ワッハッハ……。
風永 じゃなくて。
一同 (笑)。
糸井 でもねえ、これね、なんていうか……ひどくおもしろいよ。
風永 おお。自画自賛(笑)。それは、何がおもしろいんですか?
糸井 オハナシが。
風永 オハナシが!
糸井 泣くね。
風永 泣きますか! 僕、『2』はホントに泣きましたよ。
糸井 もうそんなもんじゃないね。「ひどい!! どうして、ボクをこんなにいじめるの?」みたいな。
風永 それは泣くの意味が違う。
一同 (笑)。
糸井 でも、暗〜いゲームかもしんないよ。細字で書いといて。
風永 今度は細字発言。でも、なんですか、その発言は。
糸井 バカ明かるくないんですよ。『1』や『2』とは違う。『1』も『2』も影はあるんだけど……。
風永 ポップですよね。
糸井 ポップでしょ?
でも今回は影が強い。たぶんね、登場人物って100人も出ないんですよ。通行人とかも合わせて。で、そいつらが、どういうヤツかをわからせたい。そうするとね、やっぱ影が出るんです。ストーリー的に。
風永 それはやっぱ、キャラクターの内面が入っちゃうってこと?
糸井 入っちゃうんだ。全員がどんなヤツかわかるように作ると。
風永 具体的にそれは?
糸井 つまり、キミのことをボクが見てたら、こう思うけど、キミのお母さんが見てたら、また違うわけでしょ?
そういうふうに立体的にその人像が見られるように作ったんですよ。たとえば、主人公として動いてきたキャラクターが、違う場面では脇役になることもあるから、ぐっと立体的になる。
岩田 そう。さっき自分だったのが、今度は他人として出てくることもあるんですよ。まあ、章立てになってて、主人公がひとりじゃないってのは以前言いましたけど。
糸井 キミとボクはべつの章ですれ違ってるのを、ボクから見たキミが見たり。
風永 それは、マルチシナリオでありがちな、それぞれの主人公がべつべつの町から冒険を始めて、というのとは違うわけですね。
岩田 違います。
風永 えーと、同じ場所を共有するってことは、たとえば同じシーンを共有するってことも……。
岩田 しますよ。
風永 そおかあ。それで、キマイラの森か。見る人によって、森も町も人も変わっていく……。
糸井 (ニヤニヤする)。
風永 つまり、その立体的な表現によって、キャラクターの内面が見えてくるから、影もでてくるってことですか?
糸井 そうそうそう。
糸井 よし、ここで音を聞かせてあげよう!
風永 音?
糸井 そう。ゲーム中の。それがさあ、また自画自賛なんだけどいいんだよ。それを今日持ってきたから、テープで聞かせてあげる。
風永 ……音だけ?
糸井 オイオイ、これはキミへのプレゼントだよ。俺とお前の仲じゃないか!!
風永 あ、ありがとうございます。
本郷 モノは言いようですな(笑)。
糸井 (ラジカセをセッティングしながら)え〜と、センコントは?
風永 (コンセントのことだな、と思いつつも突っ込まない)。
糸井 よし、で、このテープを、あ、あれ、入らないぞ!?
岩田 糸井さん、逆さまです。
風永 ……。
〜音楽鑑賞タイム〜
(風永注:ここで、ゲーム中に使われているという曲を3曲聞かせていただいた。はっきりいってそのクオリティーは極めて高く、正直いってビックリって感じだ。基本的にR&B風の曲なのだか、特筆すべきはその”生っぽさ”。とくにタメの効いたリズムは正直いってビックリって感じだ)。
風永 こんなスネアの音、ゲームでは聴いたことないな。『2』の音楽は鈴木慶一(ムーンライダーズ)さんでしたけど、『3』の音楽を担当しているのは、いわゆる音楽畑の人じゃないんですよね。
糸井 じゃない。だけど、いいんだよね。シナリオできると、音楽担当者が音楽を作る。で、それを聞くとまた、ボクが(シナリオを)書きたくなるんですよ。そんで今回ずいぶん音に助けられましたよ。そう、いうならば、最後のトランペットがパッパッパーッて鳴るのもコンセプトのひとつです!!
風永 意味がわかりません。でもなんにしろイイ感じみたいですね。
糸井 うんうんうんうん。そんでさ、全部で12章あるじゃないですか……あっ、いけねっ!
岩田 あっ。
風永 おっ。
岩田 重要なキーワードが(笑)。
糸井 え〜、最後のほうで……。
風永 もう遅いです。
糸井 チクショ〜!!
一同 (笑)
糸井 その最後の場面をね、書いてないんですよ、まだ、俺。だけど最後のセリフだけあるんですよ。これがオレのいちばんの楽しみなんだよ(本当にうれしそう)。
岩田 見せてくれないんですよ。「このノートに、最後のセリフを書いた。だけど見せない」って。
風永 楽しみですねえ。
糸井 イイよお。『3』はね、やっててよかったってホント思うもん。『2』までは練習だね。
一同 (笑)
糸井 やっぱゲーム作りはおもしろいわ。いま本職かもしんないね。
岩田 今回はとくに、糸井さん得意なことしかしてませんからね。
糸井 そうそう。『2』までは、いろいろ不得意なことも、よくわかんないからやってたんだけど。
風永 そういう意味でも練習だと。
糸井 そう。今回は、野球の選手にバット持たせているようなモンだからね。楽しいよ。メシ喰うときにもバット持ってるよ。打ったりなんかして。ごはんを。ガハハ。
風永 ……。
岩田 今月は糸井さんの本職はゲームシナリオライターですね。作業の割合からいって。
風永 ということは、先月はゲームを作っちゃあいなかった、と。
一同 (笑)。
糸井 先月は違った。自信を持って(笑)。でもさぁ、それは清原がクラブで遊ぶようなものだよね。って、ぜんぜんよくないじゃん!!
一同 (爆笑)。
風永 だから打てないんだ!!
糸井 そうかそうか、いちばん悪い例えだったな。う〜ん、何しろいまは作ってるのが楽しいんだよ。テーブルトークRPGあるでしょ?
いま自分はテーブルトークのゲームマスターって気がする。それもふつうのゲームマスターじゃなくて、ジャカジャンジャンって音楽を出してみたり、(ものすごい顔をして)「うぐぇ〜っ!!」、ってこともやるゲームマスター。いわば、歌って踊れるゲームマスター。
一同 (笑)。
風永 早く遊びたいなあ。
糸井 ……うーん、でもお客さんは大勢つかないかもね。
風永 お、またしても細字発言。
岩田 でも、万人に薄く好感を持たれるより、ハマる人はすごいハマるっていう…。
風永 いやいや!! 『MOTHER』はそこで甘んじるゲームじゃないでしょう!! この、日々細分化して基準がなくなっていくゲームというもののなかで、ド真ん中をブチ抜くのが『MOTHER3』でしょう!!
一同 (笑)
糸井 でもオレはそれでもいいとおもってるんだぁ……。
風永 えーっ!! ダメだダメだダメだ!! 『MOTHER』は、おとなも、こどもも、オネーサンも!!
糸井 こらこら、おまえがアツく語ってどうする。
風永 スイマセン。
糸井 やっぱね。ムリにやろうとしても……できない!!
風永 強気なんだか弱気なんだか。
一同 (笑)
糸井 う〜ん、でも今回は、ひどいことをするよ。イヤだよ。
風永 ゲームがわからないから、よくわかんないなあ。
糸井 あ〜あ、ゲームをポンと渡してさ、「こういうことだから」って、言いたいな。
風永 渡してくれ。
一同 (笑)。
風永 イヤって、どういうイヤさなんですか?
糸井 うーん、なんていうか、「そんな登場人物がいたらイヤだ!」っていう。スピリッツに『Happy!』ってマンガあるじゃない?
あれにイヤなお嬢様がいるじゃない。あのマンガって、あのイヤさだけでもってるでしょ?
風永 あれはイヤですねえ。
糸井 俺もイヤなんだよ。そういうのガンガン入れちゃったの。だから……ヤダぞぉ〜。
風永 なんだかなあ。
岩田 まあ、ヤなものがあるからイイものがイイんですよ。ボーズもあるから釣りは楽しい。
糸井 釣堀とは違うからね。
風永 そうか、なるほど。
糸井 でも、売れんのかなあ。
一同 (笑)。
糸井 だってDDも買うんだよ。全部買うとスゴイ値段になるよな。
風永 いくらになるんですか?
糸井 引き算してDDの値段当てようとしてない?
風永 ちっ(笑)。
糸井 そりゃ売れればうれしいけど、売れなくてもゼッタイ悔やまないってのを作りたいんだよ。こんなことは初めてだね。
風永 ふーん。でも、”売れなくても後悔しない”なんて、ほかの人が言ったらすごくきらいなセリフなんじゃないですか?
糸井 そうなんだよね。
風永 逆にいえば売れる自信があるから、そんなこと言えるんじゃないかなあ。
糸井 う〜ん、そう……そうかもね。コレ買わなきゃどうするよ、ってところもあるもんな。
風永 たぶん糸井さんは、つねに大衆が見えちゃう人ですよ。性質として。わかる人だけわかればいい、っていうんじゃなく、ちゃんとみんなに受け入れられるものを作るようにできていると思うなあ。
糸井 そうかなあ……。
岩田 僕も、有名人だったら誰でもいいからいっしょにゲーム作りたいってわけじゃないし。それは糸井重里だからですよ。
風永 おお! じゃ、美しくまとまったとこで、締めのひとことを。
糸井 うむ。
風永 お願いします!!
糸井 ……ぐんまけん。
風永 またそんなんかい。
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