63.お茶犬はタレントか 2002.2.5


 今回のコラムは決してファン向けに書いたものじゃないので、検索して来てしまったお茶犬ファンの方は怒っちゃうかもしれません。先に謝っときます。すいません。


お茶犬の印象

去る2002/1/22に玩具メーカーのセガトイズと芸能プロダクションのホリプロが共同で記者会見を開きました。
そこで発表されたのが「お茶犬(おちゃけん)」というキャラクターです。事業内容の全く異なる両社が、共同でキャラクター事業をスタートさせるということだったんですね。
お茶犬はホリプロに所属するタレントという位置付けで、セガトイズから玩具が発売、他にもTV出演や雑誌連載、広告出演、ヒーリングミュージックCDの発売などが計画されているということです。

でもね、僕はこのキャラクターにあまりいい印象を受けなかったんですね。



セガトイズというと「プーチ」というヒット商品がありますが、ああいったAIBO便乗型のペットロボットブームも下火ですよ。そこで、それに代わる新しいアプローチとして考え出されたのが「お茶犬」ってことなんだと思いました。
実際、3月末に発売予定されている「お茶犬(ペロ犬)」っていう商品は(おそらくこのプロジェクトのメイン商品なんだと思います)、玩具としての基本コンセプトはプーチとまったく同じものですよね。
プーチとは見た目が全然違うし、お茶の香りがするなんていう、ならではの特徴を持たせているものの、やっぱり同じシリーズに見えますよ。価格も同じだし。



そして、ホリプロというとバーチャルアイドルというCGで作られたタレントがすでに所属しています。
伊達杏子という名前のボーイッシュな感じの女の子で、5年前に世界初のバーチャルアイドルとして誕生。しかしその後なかずとばずで、昨年11月に大胆にイメージを変えた2代目伊達杏子がデビューしました。
2代目はまだデビューしたばかりなので、失敗か成功かはいえないと思いますが、評判はあまりよくないみたいだし、なんとなく失敗っぽい雰囲気が漂っています。
でも、バーチャルアイドル元祖のホリプロとしては、このままあっさり引き下がることもできなかったのか、今度はアイドルという方向以外のバーチャルタレントも模索してみることになったんじゃないでしょうか。

そんなビジネス的に袋小路に立たされていた両社が、時代のキーワード(?)、「コラボレーション」の名のもとに、協力して新しいビジネスの抜け道として考え出して作ったのが「お茶犬」なのではないか、と思ったわけなんです。

でも、なんだか安易で中途半端なコラボレーションに見えちゃうんですよ。



例えば、「○○犬」っていう感じの合成キャラにはすでにアフロ犬小屋犬(ともにサンエックスのキャラ)とかがいるので新鮮味がないでしょ。
「癒し」をテーマにするのも今更だと思いますし(癒しはある程度定着した感があるからこそ、プラスアルファの提案がないとありきたりに見える)。
プロジェクトチームは女性だけで構成されているっていうのも、「プリント倶楽部やたまごっちは女性のアイデアから生まれた!」みたいな大昔の週刊誌ネタっぽい話だし。

と、そんな感じで、どこをとっても独自の斬新さがないなー、と思ったんです。


 

お茶犬はタレント?

唯一、プーチや他のおもちゃと比べると、お茶犬にはタレントとしての活動が新しい点としてあるんですが、これもね、新しいっていうのとは違うんじゃないなーって。
というよりも、「メディアに大量露出さえしておけば、アホな消費者は「なにこれー?」とか言って、喰らいついてくるんだよ、アホだから」なんて言ってる裏の人を勝手に想像してしまって、「バカにされてるのかなぁ〜」っていう感じがするんですよねー。
(我ながらなんでこんなにネガティブ思考回路なんだ、とは思うけど。ははは(^^;))



でも、なんでそう感じるのかっていうのにも理由があって、要するに「お茶犬がタレントと呼ばれる意味がわからない」んですよね。
別の書き方をすると、タレント「お茶犬」にとってグッズ(この場合、動くぬいぐるみのおもちゃのことを指してます)とはどういう位置付けになるのかが、よくわからないんですよね。

例えば、よくある芸能人のフィギュアみたいな感じの、「タレントグッズ」という位置付けになるのかなぁ、としますよね。でも、もしそうだとしたら、みんなが持っているお茶犬にそれぞれ個性を感じることができなくなるような気がするんですね。
タレントグッズっていうのは、テレビなどに出ているタレント自身が魅力的で、その魅力を常に手元に置いておきたいっていうことで生まれたわけですよね。だとしたら、テレビに出るお茶犬もタレントとして魅力的でなければならなくて、グッズはテレビのお茶犬の魅力を受け継いだ小さな分身であるという関係になるわけですよ。
でもたぶんそうじゃないですよね。



本当は、目の前にいるグッズのお茶犬に、まず個性を感じてほしいはずです。「ここにいるのは、見た目は他のと同じだけど、自分だけのお茶犬なんだ」っていう。
それが「癒し」につながるわけだし。

でもそうなってくると、タレントとしてメディアに登場するお茶犬は一体なんなんでしょうか。

自分のお茶犬は手元にいるんだから、別のどこかにいるお茶犬が登場してるってことなのかな。でもそれだと、お茶犬所有者にするとメディアに出ているお茶犬って、限りなくどうでもいい存在に見えます。
ちょうど自分が飼っているゴールデンレトリーバーと、テレビに出ている誰かが飼ってるゴールデンレトリーバーの関係と同じですよ。種類が同じというだけで、それを見て(かわいいと思うかもしれないけど)癒されはしませんよね。

これじゃあ、通常のタレントとタレントグッズの関係は築けない、というか、お茶犬をタレントとして呼ぶのに無理があるように思えます。

それでやっぱり、メディア露出のための口実として、お茶犬を(本当はプーチと同じおもちゃなのに)むりやりタレントと呼んでいるだけだぞ、と思ってしまうわけです。はい。


 

キャラクターとの出会いって

そんなことを思いながら、お茶犬のホームページの掲示板を見ると、すでにお茶犬ファンになった人たちの書き込みがたくさんあったんですね。

それで、「なーんだ、もうちゃんと愛されてるんだなー」ってことを思うと、今度は、もしかするとこんなことを勝手に考えてしまう僕がいちばんアホなのかもなー、っていう考えも浮かんできたりして。
僕だって、もっとふつーな出会い方をしていれば、お茶犬の印象はぜんぜん違ったものになっていたんだと思ったんですよね。

僕はいろんなキャラクターを知りたいと思って、こういうホームページを作ってるんだけど、結局目先の情報を追っかけていると、今回のようにビジネス的な部分の情報が先に目に入ってくることがあるんですね。
それでやっぱり、僕はキャラクタービジネスの世界に身を置くわけでもない、ふつうの人だから、ちょっと引いてしまうんでしょうね。

じゃあ僕のやってることって、思いっきり意味なくなるじゃんかー。

ってことなのです。はい。
やっぱり、キャラクターって出会い方がすごく大切なのかも、そして僕はその大切な「出会い」を潰してしまってるだけなのかも…っていうことを今回のことから思ったりしました。



最後に、数ヵ月後にはこのお茶犬がどのくらい世間に浸透しているのか、今知ることはできないけど、お茶犬ファンはもうすでにたくさんいるわけです。
そんなファンの方を裏切ることのないように、セガトイズさんとホリプロさんには、キャラクターでもタレントでもなんでもいいので、どうかお茶犬を息の長い存在に育ててもらいたいと思います。
「おまえに言われたかない」って言われそうだけど(^^;)、そうしているうちに僕にも、いい感じでお茶犬と再会できる日がやってくるかもしれないしね。
決して、「つぶやきシロー」みたいならないようにね…(←うわー、思いっきり蛇足発言だ(^^;))。


「お茶犬」参考リンク

お茶犬公式サイト…i−modeサイトも登場しました。
セガトイズ公式サイト
ホリプロ公式サイト

関連記事へのリンク
セガトイズ、ホリプロが新キャラクター事業で提携(MYCOM PC WEB 2002.1.22)
新人タレント「お茶犬」が3月,玩具でデビュー(GAMESPOT 2002.1.22)
セガトイズとホリプロ、共同でキャラクター事業を開始――新キャラクター“お茶犬”登場(ASCII24 2002.1.22)
セガトイズとホリプロが「癒し」をテーマとした新キャラクターを発表(CNET 2002.1.23)

関連参考リンク
<バーチャルアイドル>の行方 「バーチャル=CG」ではない(CharaBiz.Com 2000)
伊達杏子5年ぶり復活(SANSPO.COM 2001.11.23)
ココロボ王国公式サイト(プーチ)


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